台湾の女子サッカー

今日は、チャイニーズタイペイ(台湾)。昨日も書きましたが、チャイニーズタイペイのテクニカルアドバイザーは、呂桂花さんという台湾体躯学院女子サッカー部の監督。神戸FCでプレーし、京都教育大学大学院で勉強していたので日本が話せます。呂さんは、去年筑波大学に研修に来ていたので話したこともありました。ただ、U16台湾チームを見ているのは知らなかったので、出会ってびっくり。今回は呂さんに台湾の女子サッカーについて聞きました。
台湾にはクラブチームというものがなく、選手は学校のチームに所属しているそうです。今回のU16の選手もほとんど体育学校の選手。しかし、基礎をきちんと教えてもらっていない選手が多く、なかなか代表チームの短期間の練習では、修正しきれないとの事。
サッカー選手全員が協会に登録しているとは限らないので、台湾全体の女子選手の人数ははっきりしないそうですが、全国大会に出場している選手の数は約1000人。チーム数では、U12が39チーム、中学11、高校5、大学3だそうです。全国大会には特に予選があるわけではないので、基本的にこれが台湾でチームとして正式に活動しているチームの数だと言っていいでしょう。大学を卒業した社会人のチームは、わずか5-6。トップリーグと言う感じではなく、趣味でやっている程度なそうです。人口規模で言えば、台湾は日本の30分の1。日本の女子サッカー人口が3万人強なので、割合的にはあまり変わらないと言うことですね。
台湾の女子サッカーの歴史は、日本よりも古く、20年前は、台湾はアジアでもトップの実力を誇っていました。日本のLリーグの鈴与に、台湾チームのキャプテン周台英さんが来ていて、とてもいい選手だったのを覚えています。その周さんは今は、呂さんのライバル校、台湾師範大学でプロコーチとして指導をしているそうです。
台湾全体としては、スポーツよりも勉強を強調する傾向があり、なかなかスポーツは盛んにならないとのこと。また体育委員会という競技スポーツを取り仕切る官庁が、各スポーツの予算や大会参加を決めるそうで、メダルを取れる見込みがないと世界大会になかなか参加できないそうです。実際、2007年まで女子サッカー台湾代表が参加していたユニバーシアード大会も、2009年は上位の成績を見込めないという理由で、派遣を急遽中止にされたとのこと。今回のアジア大会にも出ていません。男子サッカー代表は、ずいぶん前から国際大会への出場をしていないそうです。
台湾と日本は近いので、呂さんのように、日本の高校や大学に留学してサッカーをやったらどうかという話をしたら、サッカーをやっている学生は、経済的にあまり裕福でない原住民の家族が多いので、たとえ授業料などが免除になっても、生活していくお金がない。学校で経済的に優遇されるために、サッカーをやっている選手も少なくなくいそうです。実際、呂さんも自費留学ではありましたが、節約節約の毎日だったといいます。日本と台湾では物価が違うし、日本でサッカーをする上では、遠征費などはやはりお金がかかりますからね。日本の選手もお金がないとはいいながら、やはりそういう支出は捻出しているわけですから、日本はやはり豊かな国なんだと思います。
今回のU16チームは指導スタッフは全員女性。監督のリサは台湾でプロコーチとして、高校のチームを教えています。プロコーチ制度は、17年前に体育委員会が設けたその時だけの制度で、そこで資格を取った指導者は、政府から給料をもらって指導をしているそうです。呂さんが、今からプロコーチになろうとしても、制度自体がないから無理なこと。アジアサッカー連盟AFC)のA級を取ったのも、男女を通じて、リサが初めて。リサは台湾を代表する女性コーチと言えます。アシスタントコーチ、GKコーチも選手出身の女性です。今、台湾全体には、女性指導者が、各年代に数名ずついるそうです。チーム数を考えれば、中、高、大と半分以上は、女性コーチがいるということ。日本より進んでいます。
呂さんの夢は、社会人のプロチームを作って、トップリーグを作ること。今は、多くの選手が学校を終えるとサッカーをやめてしまうので、アジアの5強(北朝鮮、日本、韓国、中国、オーストラリア)に比べると、台湾代表の平均年齢もかなり若い。これから伸びると言うときに、辞めてしまうので、代表のレベルも上がらないと呂さんは考えます。企業にアプローチして、何とか作りたいと、熱く語ってくれました。